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ほんしゅうおうだん つうかいとほりょこう
本州横断 痛快徒歩旅行
井沢 衣水
「冐險世界 第四卷第拾參號」博文館、1911(明治44)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,069 字 · 29 页
大那須野平野を行くこと五里にして関谷へ着く。
ここでひと息入れて、さらに進む半里ばかり、いよいよ塩原の峡谷へ差しかかる。入勝橋というを渡れば山勢、渓流いよいよ非凡奇抜、ケチ臭い滝が路の両側にあったが、名は悉く忘却仕った。ただ谷が莫迦に深かいのと巌壁を開鑿して造った桟道とは流石に宏壮、雄大の景だと思われた。大網を過ぐればやがて福渡。この辺の景色は絶景といっても差支えあるまい。ここを通り越せば、その尖端雲に入るかと思わる天狗岩が掃川の岸から聳立っているワイ。
由来塩原という処、金持共が贅沢に夏の暑さを避けに来る土地ゆえ、街路には至る処ハイカラ男女共が手を連ねてノサ張りまわりつつあり。老人や隠居や病人共が、養生のために来ているなら結構であるが、若い身空で親爺の脛を噛り噛りロクな事もしないでブラブラ女の手を引いて歩るく、なんぞいう奴が多いから癪に触る。大手を振って、薄汚ない服を着ながら、大道せましと乗り込んだ吾等一行の有様を見て、細い目を見張ったのも痛快じゃった。
古町の会津屋旅館へ御投宿。早速一風呂浴びて渓流を耳にしながら杯を傾け、寝に付く前四人して浴場へ志ざす。