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すぎこ

杉子

宮本 百合子

「新女苑」1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,552 字 · 19 页

青空文庫

ようくそこのところを考えて下さい。――本当に、どうしてこんなことになったでしょう」

昏迷のまま、その日は定刻に皆帰った。翌朝学校へ出て、杉子はこの事件が未解決のまま心理的に一層複雑なものとなっているのを感じた。ほかのクラスへそのことが学校として前例ないこととしていつの間にかもうつたわっている。こちらから近づいてゆけばすーと遠のいて行くような、しかも好奇と恐れの交りあった眼ざしが到るところに感ぜられた。

「何て憂鬱なんでしょう」

躯を切なくよじるような表情で沢田美津子が訴えた。

「何もかも、詰んないようだわ」

眠りにくい夜を過した杉子は沈んだ顔つきでただ腐っている美津子の顔をじっと瞶めた。クラスのなかは今朝になってすっかり二つにわれてしまった。

「なんにもあんな眼して私たち見られることはないと思うわ。クラスの名誉を云うんなら、あのとき、みんなそんなこと止めましょうよって一言云えばいいじゃないの。それが名誉を知った態度だろうと思うわ。皆には黙っていて、かげで云って行くなんて……」

美津子は、

「ねえ」と、体で杉子を押すようにした。

「黙ってないで、よ。そう思わない?」