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むらのせいこうしゃ
村の成功者
佐々木 邦
「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页
「都合の好いことにはいつでも行ってから拵える」
「それは田螺なら腐るからさ」
と坂本君が簡潔に説明した。
「然うかも知れない。猫が嘗めるところを見ると、あの薬は確かに田螺だ」
「田螺に未だ疑問があるのかい?」
「ない。問題は白い粉さ。それからあれが真黒になるのが不思議だね」
「それは田螺が苦し紛れに化学作用を起すんだろう」
「こじつけたね」
「烏賊なんか墨を吐くぜ」
「成程」
「その白い粉さえ盗めば宜いんだよ」
「盗まなくても鑑定がつけば宜いんだ」
と勝田君は穏便の手段を希望した。
「いや、分析しなければ分らないよ。安心し給え。僕が巧く盗む」
「おい/\。無茶なことをしてくれると僕が困るよ。僕は始終通るんだからね」
「何あに、正義の為だ。恐れることはない」
と坂本君は勇み立った。
松原を出外れると、三人は往還から少し入り込んだ百姓家を訪れた。
「爺さん、又来たよ」
と勝田君は常得意だ。
「好いお天気だな」
「薬を五日分拵えておくれ」
「昨日拵えたのがあるよ」
と爺さんは直ぐに五つ出してくれた。これには当てが外れた。しかし坂本君は透かさず、
「僕も頼まれて来たんだが、未だあるかね?」