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むらのせいこうしゃ
村の成功者
佐々木 邦
「現代」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,883 字 · 84 页
捕らぬ狸の皮
「家へ帰ってからゆっくり伺いましょう。僕はこんなところにいると心配で仕方ありません」
「よし/\。要するに君は山の圧迫に負けちゃいけない」
「空の圧迫でしょう」
「然う/\。もう酔っ払った」
「帰りましょう」
「帰る」
「さあ」
「おい、ソロ/\御飯にしておくれ」
と睦さんは未だ手間がかゝる。
捕らぬ狸の皮
卓造君の家ではお父さんとお母さんの間に意見の相違があった。初めお父さんが何かの拍子に、
「村に工場なんか出来るのは元来面白いことじゃない」
と本音を吹いた。
「何ういう次第でございましょうか?」
とお母さんは直ぐに聞き咎めた。
「村の風儀が悪くなる。教育上面白くない」
と児玉さんは小学校長としての立場から道理だった。
「それじゃあなたは田川が金持にならなくても宜いんですか?」
と細君は今し里が昔通り村一番になるか何うかの瀬戸際、一生懸命のところだから、これも無理がなかった。
児玉さんはそのまゝ口を噤んだ。この際世道人心を説いても耳に入るまいと思ったのである。細君は既に気に入らないことが一つあった。それは一昨日児玉さんが尾崎さんの接待から戻った時の態度だった。田川へ運が向いて来ているのに、嬉しそうな顔もしない。