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とうきょうようさい

東京要塞

海野 十三

「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页

青空文庫

それからまだ小一時間もトラックはごとごとと走った揚句、ごろごろと下り坂を下りてゆくような気がしたと思ったら、やがて車はごとんと停った。

これでいよいよ一時間半の長い旅行を終ったのである。ここは何処であるのか、帆村には一向見当がつかなかった。道順も始めのうちは覚えていたが、途中から皆目わからなくなった。

一行はトラックの中から、そろそろと下に下りた。長い廊下を手を引き合って歩いてゆくと、やがて扉の明く音がして、一行はまたその中に導き入れられた。すると一緒についてきた番人が、頭巾の錠をがちゃんがちゃんと外してくれた。帆村は頭巾をかなぐり脱ぐと、深い息をしながら、あたりを見廻した。

(なるほど、ここだ。あの聴取書に書いてあった三百坪の天井の高い工場とはここのことをいうのだな)

話にあったとおり窓が一つもない。電灯は煌々とついていて昼間のように明るいが、ここにいたのでは昼だか夜だか分らない。

五郎造は引率してきた五人の左官を呼びあつめると、今日の仕事の分担をそれぞれ云い渡した。そしてすぐさま仕事にとりかかった。

帆村の仕事は、米さんという一人の左官について、一緒に床に特殊の漆喰を塗ることだった。