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とうきょうようさい

東京要塞

海野 十三

「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页

青空文庫

それとなく辺りを窺うと、この室内には一行六人の外に彼等を連れてきた逞しい髭面の番人が一人、そのほかにこの工場の人らしい職工ズボンを履いた男が三人いて、こっちの仕事ぶりをじっと監視していた。

五郎造はこの三人の男のことを、松監督さん、竹監督さん、梅監督さんと呼んでいたが、もちろんそれはこの中での符牒であるにちがいなかった。

さあ、ここが帆村のためには重大な戦場なのであった。このがらんとした亜鉛屋根の工場とも倉庫とも見える建物内こそ、そこに秘められている大秘密をあばきつくすため、彼の智嚢を傾けつくさねばならぬ大戦場だった。しかしこの簡単な建物の中から、一体どんな手懸りが得られるというんだろう。半ばやりかかった漆喰の床と、チョコレート色の壁と、亜鉛板を張った天井と、簡単な鉄の肋材と、電灯と、たったそれだけの集った場所に過ぎない。果してこの中から、思うような重大秘密が嗅ぎだせるものであろうか。

臭いの研究

米さんに従って、帆村探偵は黙々と本職らしい鏝を動かしつづけた。

器用な彼は、平常暇のあるごとに、色々な仕事を習い覚えていて、今度のような万一の場合には、すぐどんな職人にでも化けられるように訓練を積んであった。