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とうきょうようさい

東京要塞

海野 十三

「サンデー毎日」毎日新聞社、1938(昭和13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,341 字 · 37 页

青空文庫

大官は莞爾と笑った。

自記地震計

その翌朝のことだった。

帆村探偵はまた左官の道具と弁当箱とをさげて、南千住の終点へいった。

私服刑事からなる別動隊は、帆村の行動を遠方からじっと見守っている。

定刻の午前六時になった。

「変だなあ、誰も来ないじゃないか」

定刻になっても、昨日の顔ぶれは誰一人として集って来なかった。肝腎の五郎造親方さえ顔を見せなかった。

「これは失敗った」

帆村が叫んだ。もう遅かった。敵はすっかり勘づいてしまったらしい。

仕方なく私服刑事の一隊に命令をさずけて、トラックの入っている筈の倉庫の中を覗かせたが、そんなものは入っていないということが分ったばかりで、何の足しにもならなかった。

どうして帆村のことが分ったのだろう。

シンプソン病院に電話をかけて、怪我人原口吉治の様子をたずねると、看護婦が電話口に現れて、あの方なら昨夜御退院になりましたという。愕いて聞きかえしたが、全くそのとおりだった。引取人はと聞けば、どうやら親方の五郎造らしく思われた。

貴重なる捜索網が、ぷつんと破れてしまった形だった。帆村は地団駄ふんで口惜しがったが、もうどうすることも出来ない。