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まつかぜのもん

松風の門

山本 周五郎

「現代」大日本雄辯會講談社、1940(昭和15)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,862 字 · 26 页

青空文庫

「いや斬るべきでござりました」

大学がはじめて口を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)さんだ。

「なんだ、大学までがさようなことを申すのか」

「斬るべきでござりました、八郎兵衛が斬りました三人は浪人者で、穏便のお沙汰を城中に力無きものと思い誤り、農民を煽動して一揆を企てたのでござります、断乎として彼等を斬ったればこそ、一揆の者共はその支配者を失うと共に、はじめて竿入れの正しい事実を見知ったのでござります」

「然し、それは事実なのか、浪人者であったというのは、事実なのか」

「事実でござります」大学は静かに歩き続けながら云った、「よし又、そうで無かったとしましても、一揆は騒擾の重罪でござります、事納ったうえは、主謀者は刑殺されなければなりませぬ、前か後か、孰れにしても何人かは、犠牲者を出さなければ相済まぬ場合です」

「……うん」宗利は眼を伏せた。

「然し初めに三人斬ったため、農民たちからは罪人を出さずに相済みました」

宗利は体の中から、なにかがすっと脱けてゆくような気持を感じた。二人はいつか二の曲輪まで来ていた、宗利は再びあの草原を前にして立った。