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いなかがえり
林芙美子随筆集
林 芙美子
林芙美子『林芙美子随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:田舎がえり、落合町山川記、貸家探し、生活、文学的自叙伝、恋愛の微醺、朝御飯、着物雑考、新生の門、平凡な女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 页
二階の寝台からは縄のようになったサスペンダーと、大きな手がぶらさがっている。気になってなかなか寝つかれなかった。ポーランドの三等列車にどこか似ている。――朝眼が覚めたのは大垣あたりだった。娘さんは床の上へハンカチを落してよく眠っていた。昨日は灯火が暗くてよく分らなかったけれども、本当に泣いたのだろう、瞼が紅くふくらんでいた。顔を洗いに行って帰って来ると、娘さんは起きて着物を着替えていたが、わたしの上の寝台からは、まだサスペンダーがぶらさがっている。娘さんと眼が合っても娘さんはにこりともしない。よっぽど考えることがあったのだろう。小さい鏡を出して髪かたちを調えると、また昨夜のようにトランクに肘をついて鼻をすすっていた。
*
わたしは京都へ降りた。二等車からも、外国人が四、五人降りて来ていた。わたしは赤帽がみつからなかったので、ホームへ降ろしたトランクをさげて歩み出すと、「ヴァラ」と云って、わたしの小さい蝙蝠傘を背の低い男の外国人がひろってくれた。「メェルスィ・ビヤン!」そう応えて、わたしは思わず顔の赧くなるような気持ちを感じてたじたじとなってしまった。