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いなかがえり

林芙美子随筆集

林 芙美子

林芙美子『林芙美子随筆集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:田舎がえり、落合町山川記、貸家探し、生活、文学的自叙伝、恋愛の微醺、朝御飯、着物雑考、新生の門、平凡な女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,157 字 · 118 页

青空文庫

着物雑考

袷から単衣に変るセルの代用に、私の娘の頃には、ところどころ赤のはいった紺絣を着せられたものですが、あれはなかなかいいものだと思います。色の白いひとにも、色の黒いひとにも紺の絣と云うものはなかなかよく似合ったもので、五月頃の青葉になると、早く絣を着せてくれと私はよく母親へせがんだものでした。洗えば洗うほど紺地と白い絣がぱっと鮮かになって、それだけ青葉の季節を感じます。

昔、下谷の下宿にいました頃、下宿のお上さんが、「あのひとは染のいい絣を着ていたからいい家の息子に違いない」なぞと、部屋を見に来る学生のなりふりを見てこう云っておりましたが、なるほど面白いなと思いました。

一口に紺絣と云っても染のいいのはなかなか高価でしたが、その頃は仕事も現在のようにラフでないせいか、たいして高価でない絣でも、随分洗いが利いて丈夫だったものです。――私は、どうもセルを好きません。何だか小柄でむくむくしていますせいか、セルを着るかわりに、袷から単衣にすぐ変りますが、いまでもセルがわりに紺絣を着ております。セルでも、昔は柔かい薄地のカシミヤと云うのがありましたが、あれは着心地がよかったものです。