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そめきちのしゅぼん

染吉の朱盆

国枝 史郎

「サンデー毎日」1927(昭和2)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,824 字 · 35 页

青空文庫

当然なことが思いついた。

「お縫様屋敷へ行くというものさ」

どうしたものか吹き出してしまった。

「行ったって何があるものか。大きな空家があるばかりさ」

で、こいつは投げ出すことにした。

「さてこの外にはどこへ行くな?」

雲を掴むようでわからない。

「こまったな、本当にこまった。……だが……」

というと考え込んだ。

「だが矢っぱり筋道をたぐろう。お縫様屋敷へ行ってみよう。何か手がかりが目つかるかもしれねえ」

半九郎スタスタあるき出した。

上野を廻ると上根岸、お縫様屋敷の前まで来た。

冬陽が黒塀にあたっている。あれにあれた屋敷である。屋根棟に烏がとまっている。生物といえばそれだけである。カラッと四方吹きさらしである。一軒の家も附近にはない。

「矢っ張り空家さ。何があるものか」

呟いたが半九郎念のためだ、グルリと屋敷を巡り出した。

「おっ」

と俄に立ちどまったのは、雑草の中に見覚えのある、岡八の銀口の太煙管が一本ころがっていたからであった。

拾い上げたがじっと見た。

「別に変わったこともねえ。ただこいつで解ることは、矢っ張り兄貴がお縫様屋敷へ、さぐりに来たということだけさ。