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そめきちのしゅぼん
染吉の朱盆
国枝 史郎
「サンデー毎日」1927(昭和2)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,824 字 · 35 页
その女も走って行った。井戸を覗くと叫んだものである。「私の夫でございます」
そこで岡八が一喝した。
「人殺しは手前だ! ――ふん縛れ!」
果してその婦と情夫とが、共謀して良人を殺したのであった。
「岡目で見りゃァ直判りまさあ、古井戸の中は暗くてね、死人の形がぼんやりと、やっと見えるくらいのものだったんで、一目覗いて亭主だなんて、どうして判りっこがあるものですかい。殺して置いてぶち込んだんで」
或家でかんざしを盗まれた。戸外から入り込んだ形跡はない。二人の下女が疑わしかった。そこで岡八、青麦を二本、二人の下女へやったものである。
「正直者の麦はそのままだが、不正直者の麦は長くなる。明日の朝までに一寸が所な」
翌日調べると一本の麦は自若、一人の下女の持っていた麦が、一寸がところ摘切られてあった。
「そいつが詰り盗人だったんで、下女なんてものは無知なもので、そんな甘手にさえひっかかりますよ。ほんとに延びると考えて、一寸がところ摘んだんでさあ」
さてその岡八だが、最近に至って、一つの難事件にぶつかってしまった。
いい若者が無暗とさらわれ、十数日たつと送り返されて来る。