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かきのきのあるいえ
柿の木のある家
壺井 栄
「柿の木のある家」山の木書店、1949(昭和24)年4月20日<br>「海のたましひ」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年6月14日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 15,460 字 · 32 页
二
「あっ、ほんとだ、ぼく、上の方みてくる。」
といったかと思うと、するすると馴れた足つきで柿の木にのぼりました。
「ひい、ふう、みい、よお、いつ、むう、なな……ああ、一ぱいなってるよ。」
「ああよかった。よかったね、洋ちゃん。」
フミエは木の上をふりあおいでいいました。
「おばあさん、柿がなっとるぞう。おかあさん、おかあさん、柿だぞう。」
洋一は家の中へよびかけました。おばあさんもおかあさんもいないのか、家の中からは返事はありませんでしたが、二人はもううれしくてなりません。
「よかったね。洋ちゃん。」
「うん。」
「あんまりよくないの。」
「ううん。」
「うれしくないみたいだよ。」
「おじいさんが生きてればもっといいんだがな。」
「ほんとだ。でもしょうがないもの。柿の花、供えてあげようか。」
二人は柿の木の下でそんな話をしていました。青葉がてりかえして、青い蚊帳の中にでもいるように二人の顔は青くそまってみえました。
二
フミエたちの家では、畠といえば裏の空地にやさいを作ることのほか、百姓はしていませんでした。おとうさんが船のりだったからです。おかあさんはずっとせんから、よその仕立ものをしていました。