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かきいろのかみふうせん
柿色の紙風船
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,032 字 · 28 页
やがて判決言渡があった。
「被告ヲ懲役五年ニ処ス!」
私は晴れて刑務所の人間になった。私は落ちつくところへ落着いて、たいへん安心したのだった。
その頃、世間では「ラジウム入り患者の失踪事件」のことなんか、もうすっかり忘れてしまっていた。病院の方でも、もう出ないものと諦めていた。警察では、真犯人の私のことを、あろうことかあるまいことか、常習万引罪で刑務所に封鎖してしまったので、いくら巷を探したって、犯人が網に懸る筈がなかった。かくして例の事件は、盲点に巧みに隠蔽せられることとなった。
それはそれで大変うまくいったのだが、唯一つ困ったことが出来た。
「なんか異状はないか」
と看守が、私の独房の窓から、室内を覗きこんだ。
「はア、困っていますんで……」
「困っている? それは何か」
「痔でござんす。痛みますんで、夜もオチオチ睡れません」
「睡れないのは、誰でも入りたてはちと睡れぬものさ。痔だなんて、つまらん芝居をするなよ」
「芝居じゃありませんです。じゃそこで看守さんは見て居て下さい。いま此処で股引を脱いで、御覧に入れますから」
そういって私は柿色の股引に手をかけた。