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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
と云いながら、お金に油をさし、いよいよ滑らかになる女房の舌の働きに感心して居た。
専売局に、朝から晩まで働いて家の暮しを立てて居た。
今年二十三になる恭二にはまだ独立するだけのものは取れなかった。
体は弱し、中学を出たきりなので、これぞと云う働きもない男に、そう十分なだけのものをくれる慈善家はこの世智辛い世の中には居ない。
恭二は静岡の魚問屋の坊ちゃんで、倉の陰で子守相手に「塵かくし」ばかり仕て居たほど気の弱い頭の鉢の開いた様な子だったが十九の年、中学を出ると一緒に、良吉の家へ養子になった。
良吉の妹が口を利いたので、母親がほんとでありながら、愛されて居なかったので、父親の意志で、恭二は良吉の後継者と云う事になった。
十九にもなったものを只食わしては置けないと云うので、あらんかぎりの努力をして漸う専売局の極く極く下の皆の取り締りにしてもらったのは、良吉のひどい骨折りであった。
免職されない代り、目立ってもらうものが増えもしない。
何をしても要領を得ない様な、飄箪□□なので、とげとげしたものの間を滑りまわるには却って捕えどころがなくて無事であった。