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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
として十円だけもらって来たのがどれだけ馬鹿なのか、間抜けなのか分らなかった。
家の様子も知らないで、やたらに川窪を疑って居るお金の言葉に、栄蔵は赤面する様だった。
ああやって心配して、気合をかけて、病気をなおす人の名や所まで教えた上、痛んだら「こんにゃく」の「パっぷ」をしてやれなどと云って呉れたあの家の主婦に対して、あまり人を踏みつけた様な言葉を吐かれる度に、裏切って居る様な感じがして居た。
「お前、そんなに川窪はんを疑うてやが、お前ならどうする積りなんえ?
「私?
私なら、きっきと毎月出すと云う書き物でももろうて来る。
「そんな事、出来ると思うとるんか。
人に金貸して、利息でも取り立てる様に書き物を取るなんて……
こっちは、出してもらう身分やないか。
一つ首を横に振られれば、二度と迫られない身やないか。
そんな心掛やから、子も何も出来んのえ。
早くから里子にやられて、町方の勘定高い店屋に育ったお金が、あまり金臭いので栄蔵は今更ながらびっくりした。
一体、人なみより金銭の事にうとい栄蔵の目には、お金の実力より以上に金銭に対して発動する力の大きさ猛烈さがうつった。