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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
「哀れなお君を面倒見てやって下さい、
私の一生の願いやさかいな。
ほんにとっくり聞いといで下さる様にな。
貴方さえ、しっかり後楯になっとっておくれやはれば、私は、死んだとて、安心が出ける。
時に栄蔵の口から、お金を呪う様な言葉がとばしり出ると後には必ず、哀願的な、沈痛な声でお君をたのむと云った。
そう云われる度びに恭二は、何とも知れず肩のあたりが寒くなって、この不具者について不吉な事ばかりが想像された。
何故と云う事もなく、只直覚的にそう思われるのでそれだけ余計、恭二にはうす気味が悪かった。
まさか「お死になさるな」ともむきつけに云えないので、
「どんな事があっても貴方が達者でいらっしゃらなければ……
第一に憂き目を見るのはお君ですからね、唖でも『いざり』でも生きてさえ居れば親と云うものはたよりになるものです。
せいぜい体を大切になさって、『達さん』の成功するのを見届ける様になさらなければつまりませんものねえ。
いろいろな事は皆その時の運次第なんですから。
云う方も、云われる方も、ひやっこい何となし不安が犇々と身に迫る様に感じて居た。
(六)