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えいぞうのし
栄蔵の死
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,295 字 · 77 页
余り急に栄蔵が戻って来たのでお節は余程良い事かさもなければ此上なく悪い事があっての事だと思ってしきりに東京の模様を話せとせがんだ。
重い口で栄蔵はお君の様態、お金の仕打、ましては昨夜急に自分が立つ動機となったあのお金の憎体な云い振り、かてて加えて達の不仕末まで聞かされて、いやな事で体中が一杯になって居ると云った。
「そらな、達も他の事で――まあ病気やなどで出されるのは仕様あらへんが、女子の事務員に手紙などやって、先方の親に怒鳴り込まれて社から出された云うては顔が立たんやないか。
今時の若い者には武士の魂が一寸も入って居らん。若し戻りよってもきっと敷居をまたがせてはならんえ。
事によったら七生までの勘道や。
栄蔵は、自分と同年輩の男に対する様な気持で、何事も、突発的な病的になりやすい十七八の達に対するので、何かにつけて思慮が足りないとか、無駄な事をして居るとか思う様な事が多かった。
「まあ飛んだ事呉れた。
でも、まさか何んだっしゃろ、
その事で、出される様な事あらへんやろなあ。
何んしろ十三の時から手離して独りで働いて学校も出、身の囲りの事もしとるのやさかい、手塩にかけんで間違いが出ければ皆、力の足りぬ親が悪いのやさかい……