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こうしじまのもうふ

格子縞の毛布

宮本 百合子

「婦人公論」1926(大正15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,755 字 · 6 页

青空文庫

「おばさん、どうかこれ暫く預って下さいな、私……私――。誰にも云わないでね、誰にもね」

いほは、行李の外見は細引で縛ったようにしたまま、中から大抵の着物を煙草屋に運んでしまった。いほが、こういう智慧を出して逃げたのは、これが初めてではなかった。世間には、まま酷い主人があるものだ、足りないのは。

本人のいほだけになると……煙草屋の婆は、ひそひそ訊いた。

「それで、お前さんいつ逃げ出すの?」

いほは、そう訊かれると、埃でも入ったように目瞬きをした。

「私困っちゃうことが出来たのさ、毛布がね、取れないんだもの」

「へえ」

「毛布だってね、ただの毛布じゃないの。阿母(おっか)さんが呉れたんでね、黄色と茶色の縞でそりゃ暖いの。今あの人が掛けてるのよそれを、夜。あんなのとられちゃあ私口惜しいからね、そのうち、ばれないように巧く持って来るわ」

久しくいほは煙草屋に来なかった。或る夕、表をかけて通るのを、婆さんはやっと呼びとめた。

「どうするのさ」

いほは、赧くなって、気ぜわしなく毛糸襟巻の房を指に巻つけながら、鼻にかかった声で云った。

「だっておばさん……あれじゃないの、私毛布置いて来るのは厭なんだもの。