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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 页
これにはびっくりした。先生がやまをかけてるんだと思った。そしてそれが少しも掛値なしの年数だと聞いて、こんどは本当にびっくりした。
「へえーおっどろいた、そんなに古いとは知らなかった、へえー、そんなかね、だけどそんなに古い学問をおれたちがならって、まだなにか役に立つことがあるのかい」
茅野先生そのときは、いつもよりずっと濃い代赭色になった。それで悠二郎はこいつはいつもよりずっと長く楽しめるなと思い、思ったとおりゆっくり楽しむことができた。――茅野先生は三十日かよって来たが、それで辞職して来なくなった。卑怯にも告げ口をしたらしい、悠二郎は父からこっぴどく叱られ、廊下の板の上へ半日坐らされた。
「明日から学堂へゆくのだ、学堂でふまじめなことをすると、このくらいのことでは済まぬぞ」
そういうことで、兄の松太郎といっしょに上屋敷の中にある藩の学校へゆくことになった。
学堂では茅野先生を相手にするようにはいかなかった。生徒は七歳から十二歳までで、おめみえ以上の者の子供に限り、三十四五人いた。おめみえ以下の者は、それぞれ学堂の教官の私宅で教わるのである。学堂には校長のほかに教官が五人いた。