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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 页
池のふちにあるへんてこな岩の、肩のところに出っ張があった。かたちが悪いからそいつを金槌で欠いて取ったが、そのときも同じような小言をくわされた。それから踏石、――玄関の脇の木戸口から広縁まで、平ぺったい石がとびとびに置いてある。それを踏んでゆくようになっているのだが、そいつがひどくぞんざいで、一つは左へ次は右へというふうに、へんに曲って置かれてあった。おそらく意地の悪い人間か眼の狂ったやつの仕事だろう――よし、たまには善いこともしてやるさ、悠二郎はこう思って、そいつを一列にまっすぐに置きなおした。たいして大きくも厚くもないが、重いことはべらぼうに重かった。彼は汗だくになり、終ったときには足がふらふらした。
ひとに知れない善行というものは気持のいいものだ、悠二郎は父がそれを発見したときの、驚きと嘆賞の声を想像し、疲れも忘れてぞくぞくした。――が、その結果はまるで予期に反したものだった。どう予期に反したかは云わないほうがいいだろう、……要するに彼は父の見ている前で、もういちど汗だくになって、その踏石を元のように置きなおさなければならなかった。
庭の土を掘っていたら慈姑が出て来た。