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くわのきものがたり

桑の木物語

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,815 字 · 79 页

青空文庫

山の手というところはきてれつなことがあるもんだと思って、掘れば幾らでも出て来るので、三十五六も掘りだしたら、そいつは水仙の球根だったので怒られた。また春さき庭の一隅にえたいの知れない芽が出た、きみの悪い色をしたやつがにょきにょき出たので、毒の草かなにかだと思って、きれいにひっこ抜いてやったところが、それは芍薬の芽だそうで、これにもいっぱいくわされた。

金魚のときはもっとひどくやられた。

父の居間のある広縁のさきに、水蓮を浮かせた大きな鉢がある、そいつは高さが二三尺に周囲が十二三尺くらいで、父はその中で金魚を飼っていた。薄い緑色に濁ったきたならしい水の中に、赤と白の斑なやつが十尾ばかりいるらしい。水蓮の葉の蔭とか、濁った水を透して、いつもそいつらは妙にのたのたと、草臥れたような泳き方をしていた。

「お父さまが大切にしていらっしゃるんですから悪戯をしてはいけませんよ」

母は心配そうに諄くこう云った。――見ているだけならいいので、側へいっては眺めたのである。そいつらは大きくて肥えていた、なかには五寸よりもっと大きいらしい、頭のところが瘤々で、胴が毬みたいに肥えてひどくぶざまなのもいた。