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うめづしえんおうでん

梅津只円翁伝

杉山 萠円

「福岡日日新聞」1934(昭和9)年4月14日~5月31日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,582 字 · 130 页

青空文庫

「それを持って筥崎宮の二番目の中の鳥居の傍に在る何某(失名)という茶屋に行って、そこに居る禿頭の瘠せこけた婆さんへ、その短冊を渡してオオダイを下さいと云いなさい。オオダイ……わかるかの」

「オオダイ」

「そうそう。オオダイ。それを貰うたなら落さんように持って帰って来なさい」

「オーダイ」

「そうそう。オオダイじゃ。雷除けになるものじゃ。わかったかの」

筆者は何となくアラビアン・ナイトの中の人間になったような気持で田圃通りに筥崎へ向った。オオダイとは、どんな品物だろうと色々に想像しながら……。

中庄から筥崎までタップリ一里ぐらいはあったろう。途中の田圃には菜種の花が一面に咲いていた。涯てしもなく見晴らされる平野の家々に桃や桜がチラホラして、雲雀があとからあとから上った。

瓦町の入口で七輪を造る土捏ねを長い事見ていた。櫛田神社の境内では大道手品に人だかりがしていた。

筥崎松原にはまだ大学校が無かった。小鳥が松の梢一パイに群れていたり、鼬が道を横切ったりした。少々淋しくて気味が悪かった。

こうしてずいぶん道草を喰いながら筥崎に着くと、中の鳥居の横の茶屋は一軒しかなかったので直ぐにわかった。