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きょうゆう
梟雄
「文藝春秋 第三一巻第八号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,160 字 · 31 页
尾張半国の領主にすぎない織田信秀にとって五千の兵隊は主力の大半というべきであった。この損失のために信秀の受けた痛手は大きすぎた。イヤイヤ信秀に屈していた尾張の諸将のうちにも、信秀の命脈つきたりと見て背くものも現れはじめた。
信秀は虚勢を張って、翌年の暮に無理して美濃へ攻めこんだ。もっとも、稲葉城下へ攻めこんだわけではなく、城から遠い村落を焼き払って野荒ししたにすぎないのである。
ところが天罰テキメン。無理な見栄は張らないものだ。野荒しの留守中に清洲の織田本家の者が信秀に敵の色をたて、信秀の居城古渡を攻めて城下を焼き払って逃げたのである。
信秀は慌てて帰城して対策を考えたが、清洲の織田本家はいま弱くても、とにかく家柄である。これを敵に廻してモタモタしていると、味方の中から敵につくものがどんどん現れてくる可能性がある。
清洲の本家が信秀から離れるに至ったのは落ち目の信秀がいずれ美濃の道三に退治されてしまうと見たからであろう。
清洲の本家ともまた美濃の道三とも今はジッと我慢して和睦あるのみ。こう主張して、自らこの難局を買ってでたのは平手政秀である。
平手は直ちに清洲との和平を交渉するとともに、一方美濃へ走った。