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きょうゆう
梟雄
「文藝春秋 第三一巻第八号」1953(昭和28)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,160 字 · 31 页
オレの心を見せたいなと思った。
むろん義龍を殺す機会はあった。非常に多くあった。これからも有りうる。信長を殺す機会がいつでもあると同じように。
いつでも殺せるが、オックウだった。なんとなく、そんな気持ですごすうちに、今のようになってしまった。今ではその腹心が堅く義龍をとりまいていて、殺すのも大仕事になってしまったようである。
しかし、早いうちなら義龍を簡単に殺せたろうかと考えると、これも案外そうでないような気がするのだ。
むろん殺す実力はある。今でも殺す実力はある。しかし、実力の問題ではなく、それを決行しうるかどうかという心理的な、実に妙な問題だ。
信長に濃姫を与えたのはナゼだろう? そのころ信長は評判の大バカ小僧であった。自分の領内の町人百姓の鼻ツマミとは珍しい若様がいるものだ。
なぜ鼻ツマミかというと、町では店の品物を盗む。マンジュウとかモチとか、大がい食物を盗むのだ。野良でも人の庭の柿や栗や、腹がへるとイモや大根もほじくって食ってしまう。畑の上で相撲をとる。走りまわる。鼻ツマミとは無理がない。
むろん頭はバカではない。よその殿様の子供のやらないことだけやってるようなバカなのだ。