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もりのいしまつ

森の石松

山中 貞雄

「シナリオ・臨時増刊号」1937(昭和12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,949 字 · 49 页

青空文庫

「じゃ帰るよ」

「親分様によろしく仰しゃって下さいね」

S=二階

お半、上って来る。

「帰ったな?」

「ええ」

お半、泌々言う。

「妾……幸せね」

「出し抜けに何を言い出すんだ? あ……そうか。本当だろうか」

「何の話?」

「親分が俺達に家を建てて呉れるって話よ」

「そうなると楽しいわね」

「お前がいつも言ってたな。家を一軒持って二人が水入らずで暮せる様になりたいって……」

「今度は三人よ」

「そうか、そうだったな」

「女の子かしら」

「男の子、嫌いかい?」

「嫌いじゃないけど……大きくなって貴ン方みた様な男になると、困るから……」

「俺みてえな男って?」

「貴ン方怒るかも知れないけれど、妾……子供だけはやくざにしたくないの」

「チェッ何を言ってやがんでえ。やくざは男の中の男じゃねえか。俺の伜が大きくなれァ森の石松の二代目を継ぐに決まってらァ」

と言ったものの石松、ふと故郷の親父の事を思い出して居ます――

「そうだ。帰り途に故郷の親父の処へ寄って見よう。俺ァ急に親父の顔が見たくなった」

S=階下

表から鶴吉が四五人の手先らしい男と連れ立って戻って来た。