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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

。二人は離れ小島のような隅っこのテーブルを占領して、同じ献立の食べ物を見くらべてたのしそうに笑った。

「ミチミ、お美味いかい」

「ええ、とってもお美味いの。このお料理には、どこか故郷の臭がするのよ。なぜでしょう」

「ほう、なぜだろう。――セロリの香りじゃない」

「ああセロリ。ああそうネ。先生のお家の裏に、セロリの畑があったわネ」

「また云ったネ。――今夜かえってからお処刑だよ」

「アラ、あたし、先生ていいました? ほんと? ごめんなさいネ。でもあなたがミチミなどと仰有るからよ」

「ミチミはいいけれど、先生はいけないよ」

「まあ、そんなことないわ。あたし先生ていうの大好きなのよ。いいえ、あなたがお叱りになるように、けっして他人行儀には響かないの。それはそれはいい響きなのよ。先生ていうと、あたしは自分の胸をしっかり抱きしめて、ひとりで悩んでいたあの頃のいじらしいミチミの姿を想い出すのよ。おお杜先生。先生がこうしてあたしの傍にいつもいつも居てくださるなんて、まるで夢のように思うわ。ああほんとに夢としか考えられないわ」

「ミチミ、今夜君は不謹慎にも十遍も先生といったよ。後できびしいお処刑を覚悟しておいで」