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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页
ミチミはそんな声が入らぬらしく、小さいビフテキの片を頬ばったまま、長い吐息をついた。
「ねえ、あなた。あの学芸会の練習のとき、あたしが誰かに殺されてしまったと思ったお話を、もう一度してちょうだいナ」
ミチミは、テーブルの向うから、杜の顔をのぞきこむようにして囁いた。
「またいつもの十八番が始まったネ。今夜はもうおよしよ」
「アラいいじゃないの。あたし、あの話がとても好きなのよ。まあ、こういう風にでしょう。――僕はすっかり落胆した。恐怖と不安とに、僕の眼前はまっくらになった。ああミチミはどこへ行った? 絶望だ、もう絶望だッ!」
「これミチミ、およしよ」
「――しかし突然、僕はまっくらな絶望の闇のなかに、ほのかな光り物を見つけた。僕は眼を皿のように見張った。明礬をとかしたように、僕の頭脳は急にハッキリ滲んできた。そうだ、まだミチミを救いだせるかもしれないチャンスが残っていたのだ。僕はいま、シャーロック・ホームズ以上の名探偵にならねばならない。犯行の跡には、必ず残されたる証拠あり。さればその証拠だに見落さず、これを辿りて、正しき源を極むるなれば、やわかミチミを取戻し得ざらん――」