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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

「――ねえ、可愛そうに女学生ですよ。袴をはいたまま、死んでいますよ」

といって、うしろを指した。

「えッ、アー女学生が――」

瞬間、彼の目の前は急にくらくなった。

(ミチミよ、なぜ僕は一直線におまえのところへ帰ってこなかったんだろう!)

彼は心の中で、ミチミの霊にわび言をくりかえした。

杜はそこで勇猛心をふるい起すのに骨を折った。どうして見ないですむわけのものではなかった。彼はいくたびか躊躇をした末に、とうとう思いきって、交番の中をこわごわ覗きこんだ。

黒い飾りのある靴、焼け焦げになった袴、ニュッと伸ばした黄色い腕、生きているようにクワッと開いている眼――だが、なんという幸いだろう。その惨死している女学生はミチミではなかった。

「ああ、よかった。――」

彼は両手を空の方へウンとつきだして、その言葉をいくどもくりかえした。

だが、愛の巣のあったと思うところには、赤ちゃけた焼灰ばかりがあって、まだ冷めきらぬほとぼりが、無性に彼の心をかき乱した。

そのなかに、もしやミチミの骨が――と思って、焼けた鉄棒のさきで、そこらを掻きまわしてみたが、人骨らしいものは出てこなかった。