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かんおけのはなよめ
棺桶の花嫁
海野 十三
「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页
突然大きな声が耳許にして、二人の身体は両方から支えられた。――杜はその力の下からフーフー息を切った。そして誰か通行人が、自分たちのために叫び、自分たちを支えていてくれることに気がついた。
「さあ、落着いて落着いて」と見知らぬ声が云った。
「まあ無理はないよ、お互いに無一文何にもなしになったんだからネ。しかしお前さん方もまだまだ若いんだ。もっと気を大きく持ち、これから夫婦して共稼ぎをするなりしてもう一度花を咲かす気持でなくちゃあ――」
「そうだそうだ」と別の声が云った。
「全く死にたくもなるよ。俺も昨日それをやりかけた。しかしそれは死神が今俺たちについていると知って止したんだ。死神のやつのせいで、今ならとても簡単に死ねるような気持になっているんだ。しかし考えて見なよ、このとおり多い惨死者のなかで、俺たちはともかくも助かっているんだ。なぜ助かったか、そこを考えなくちゃいけない。ねえ、貴郎がた――さあお内儀さんも元気を出して、下りて歩きなせえよ」
要らざる訓戒とは思ったが、それを聞いているうちに、杜はそれがなんだかしみじみ自分の心をうっているのに気がついた。