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かんおけのはなよめ

棺桶の花嫁

海野 十三

「ぷろふいる」1937(昭和12)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,845 字 · 86 页

青空文庫

「なんだとォ――」

と、杜も強く云いかえした。

「フン、お千がたいへんお世話になっていまして、お礼を申上げますよ。貴公は、人の女房にたいへんに親切ですネ」

「なにッ――では君は」

「もちろんお察しのとおり、私はお千の亭主でさあ。区役所の戸籍係へ行って調べてきたらいいだろう。よくも貴公は、――」

「ああ、そうだったか。貴方は、死んだことと思っていたが――」

「ちゃんと生きていらあ。貴公にもそれがよく見えるだろうが。さあどうしてくれる」

「さあ――」

といっているところへ、表の方で、なんだか意味はわからないが、呼んでいるような声がした。すると五十男は、急に慌てだし、

「ちえッ。――まあそのうち、改めて来るから、そのときは性根を据えて返答をしろ、いいかッ」

と云い捨てて、裏の便所の方から、大狼狽の態で出ていった。杜はホッと溜息をついた。

お千も同じように、ホッと吐息をついた。そして彼の方に媚びるような視線を送って、

「――あいつは悪い奴なのよ。あたしの本当の亭主じゃなくて、その前にちょっと世話になっていた麹町の殿様半次という男なのよ。明るいところへ出られる身体じゃないんだけれど、どういうものか今は飛びあるいていて、きょう昼間、運わるくあたしを見かけて因縁をつけに来たのよ。