轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页

青空文庫

「新八とは、ばかなやつだ」六郎兵衛はうつろな声で呟いた、「人もあろうに、あのなまくらな新八とは」

「失礼ですが」玄四郎は六郎兵衛に酌をしてやって、それから劬るように訊いた、「貴方のことは滝尾どのからうかがいましたが、失明されたということは知りませんでした、ずっと以前から御不自由だったのですか」

「その話しはするな、きさまには関係のないことだ」と六郎兵衛は毒どくしく云った、「それよりも、みやのやつが江戸にいるかどうか、知っているなら正直に云ってもらおう」

「知りません」と玄四郎が答えた。

六郎兵衛はじっと耳をすましていて、「もういちど云ってみろ」と云った。

「私は知りません」と玄四郎はすなおに答えた、「私はあまり外へ出ませんし、外出してもこれまでに滝尾どのを見かけたことはありません」

「隠しているな」六郎兵衛は唇を歪めた、「その声はまっすぐではない、きさまはなにか隠している、少なくとも、みやのいどころを知る手掛りを隠しているだろう」

玄四郎は黙った。湯島へゆけば消息はわかる、池之端の茶屋で会ったとき、新八は湯島の家の世話になっていると云った。いまでもそこにいるかどうかは知らないが、もし湯島の家を出たとしても、いって訊けばどこにいるかはわかるに違いない。