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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

04 第四部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,078 字 · 285 页

青空文庫

断章(十四)

町家は源助町から芝口一丁目まで、武家屋敷は幸橋御門まで焼けた。伊達家は浜屋敷も全焼してしまい、幼君亀千代は、側近の者に護られて、品川の下屋敷へたち退いた。

火事は明くる日の午前三時におさまった。

断章(十四)

――申上げます。

「内膳か、要談ちゅうだ、急な用でなかったらあとにしろ」

――おそれながら、涌谷どのが出府されるとのことでこさいます。

「涌谷が出府すると」

――ただいま仙台より大槻斎宮の急使が到着致しました。

「口上か、書状か」

――詳しいことは書状をもって申上げますが、とりいそぎ口上にて、ということでございます。

「よし、聞こう」

――涌谷どのがこの正月(寛文十一年)仙台において、幕府御国目付に面会されたことは、御承知のとおりでございます。

「知っている、吉岡(奥山大学)が訴状を出したすぐあとのことだ」

――吉岡が訴状をですか。

「隼人には話さなかったか」

――存じませんでした。

「大学は三年まえから、しきりに自分の寃罪を主張し、二度も国目付へ訴状を出した、これまでは国目付も受付けなかったが、今年の国目付はそれを受取って、老中へ届けることになったのだ」