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けんりょくのひげき

権力の悲劇

宮本 百合子

「婦人公論」1949(昭和24)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,912 字 · 10 页

青空文庫

あどけなくおさないチャールズの命と、そのすこやかな成長を願わずにいないだろう母の思いと、すべての人類を醜い不具にして死滅させる兵器の発見という宣伝との間には、ほとんど信じられないほどの残酷さがある。若い親たちと赤ン坊とのあの家族写真には見えない空のどこかに、その残酷さが、禿鷹のように舞っているのだろうか。

八月一日の『ニュース・ウィーク』には、はからずも王女エリザベスの二つの表情がのせられている。その一つは、涼しい夏別荘の芝生で無邪気に家族が団欒しているあの家族写真。もう一枚は閲兵式場の王女エリザベスの姿である。こちらの方は『ニュース・ウィーク』の投書欄にのっている。テキサスのトム・エフ・マンデン(姓名のあとに二世とつけているから、マーシャルというテキサスのその市でのマンデン家は、社会的に何かの意味をもっているのだろう)という人が七月十八日の『ニュース・ウィーク』にのったこの閲兵式の写真について、手紙をよこしているのだった。トム・マンデン氏は、そのエリザベス王女の写真が口の中にいやなあと味をのこした、と書いている。「仮装平時閲兵のために、暑気あたりに苦しんでそこに卒倒した不幸な若い婦人をそのまま放っておくほど、大英国の軍規はきびしいのだろうか」