轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はし
橋
岡本 かの子
「新潮」1933(昭和8)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,955 字 · 4 页
橋は太鼓に近いほど反っていた。道から取付きの石段を上って行くと両側に商い店が並んでいる。古い戸を閉じて看板だけで靴屋だの首飾りだのを売る店であることが判る。昼に河岸からみるとこの商い店たちは十七世紀の女の輿車のような派手な外側に見えた。いま親しくこう近寄ってみると平凡な普通の商い店であることが判る。私はそれが気に入った。角から二軒目の店の二階にはぼんやり灯影が窓からさしていて、やっぱり世間の生活のとばっちりが橋の上にも沫ねついているのを感じる。うっかりそれらに眺め入っているとここはどこかの裏町で橋の上であるのを忘れさえする。
東詰から西詰へ西詰から東詰へ私は勇気を出して日和下駄を鳴らして渡った。冬の石畳は、霜の気を帯びてヴェニスの空に高く響いた。少女時代に断ち切られたあの気持ちの成就か。あの時の恨みの復讐か。私は私の期待した以外の意味で満足させられた。あーあよくまあ私は今まで生きてこのような橋さえ渡れる――。
猫の影がさむそうに来て一の家の窓の前にうずくまった。