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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

03 第三部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 页

青空文庫

このぐらいの路がついていて、三里も五里も人が住んでいないはずはないんだよ。」

大沢は励ますように言った。次郎は答えなかった。すると恭一が急に立ちどまって、

「引きかえした方がよかあないかなあ。」

「さっきの村までかい。」

と、大沢も立ちどまって、

「しかし、あれからもう二里はたしかに歩いたんだぜ。」

次郎は、もうその時には、路ばたの木の根に腰をおろし、二人の顔を食い入るように見つめていた。

三人が、この冬の真最中に、「筑後川上流探検」――彼らはそう呼んでいた――をはじめてから、すでに四日目である。探検とはいっても、べつに周到な計画のもとにやりはじめたのではなく、三人とも地図一枚も持っていなかった。久留米までは汽車で来たが、それからは川に沿って路のあるところを、本流だか支流だかの見境もなく、ただやたらに奥へ奥へと歩き、そして、日が暮れそうになると、行当りばったりに、寺があれば寺、それがなければ農家に頼んで泊めてもらい、翌朝弁当を作ってもらって、一人あたりなにがしかのお礼を置いて来るといったやり方だった。何でも、第二学期の試験がすんだ日、大沢がたずねて来て雑談しているうちに、誰かが「背水の陣」