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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

」

と、田沼先生は、そのゆたかな頬をいくらか赤らめて苦笑したが、そのあと、話題をかえるつもりか、急に思い出したように言った。

「それはそうと、荒田さんは、このごろは禅のほうはいかがです。相変わらずおやりになっていらっしゃいますか。」

「ふっふっふっ。」

と、荒田老は、あざけるように鼻で笑ったが、

「禅は私の生活ですからな。毎日ですよ。」

「毎日だと、おかよいになるのが大変でしょう。このごろは、どちらのお寺で?」

「すわるのに寺はいりませんな。」

「すると、お宅で?」

「うちでもやりますし、どこででもやります。こうして飯を食ったり話したりしている間も、私は禅をやっているんです。」

「なるほど。」

「どうです。塾生たちにも、少しやらしてみては?」

荒田老はおしつけるように言った。

「坐禅とまではむろん行きませんが、静坐程度のことなら、ここでもやっているんです。起床後とか、就寝前とかに、ほんの二十分か、せいぜい三十分程度ですが。」

「それでもやらんよりはいい。」

と、荒田老は、これまでのぶっきらぼうな調子から、急に気のりのした調子になり、

「しかし、指導をうまくやらんと、時間のむだ使いになりますな。