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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

」

「ええ。」

次郎の頭には、すぐ大河無門の顔がうかんで来た。しかし、「変わった」という先生の言葉の意味がちょっとうたがわしかったらしく、

「大河っていう人のことでしょう。」

「うむ、大河無門、さっき名簿で見たんだが、めずらしい名前だね。」

「ええ、名前もめずらしいんですが、人間も非常にめずらしいんじゃないかと思います。」

「私もそう思う。たしかにめずらしい青年だよ。」

「もう本人をご存じなんですか。」

「まだ直接会ってはいない。しかし、式場で眼についたので、朝倉先生にたずねて見たんだ。」

次郎は、「式場で眼についた」ときいた瞬間、何か明るいものが胸の中にさしこんだような気がした。かれはうれしくなって、膝をのり出しながら、

「あの人、大学を出ているんです。」

「そうだってね。」

「年も、ぼくよりずっと上なんです。」

「そうだろう。顔を見ただけでも、たしかに君の兄さんだ。それに――」

と田沼先生は、ちょっと微笑して、

「精神年齢のほうでは、いっそう年上らしいね。」

次郎はそれを冗談だとは受け取らなかった。かれは真剣な顔をして、

「ぼく、あの人が塾生で、ぼくが助手では、変だと思うんですけれど……」