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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

土曜日の晩には、炊事部はみんなの弁当の献立をするのに忙しかった。次郎が道順の相談のために、各室に引っぱりこまれたことはいうまでもない。そして、いよいよ日曜の朝食がすむと、二十分とはたたないうちに、塾内はもの音一つしないほど、しんかんとなってしまったのである。

みんなが出はらってしまうと、次郎も一週間ぶりで解放された時間を持つことができた。いつもだと、さっそく読書をやるか、空林庵に行って、朝倉先生夫妻とゆっくり話しこむかするはずだったが、今日は、事務室の隣りの自分の部屋で、机によりかかったまま、ながいことひとりで考えこんでいた。

机の上には、二三日まえ、兄の恭一から来たはがきが、文面を上にしてのっていた。それには、

「朝倉先生にもしばらくお目にかかっていないので、近いうちに、ぼくのほうから訪ねたいと思っている。塾がまたはじまったそうだから、先生も君も日曜でなければひまがないだろうと想像して、だいたい今度の日曜を予定している。ぼくのほうはたぶん変更の必要はあるまいと思うが、君のほうでさしつかえがあったら、すぐ返事をくれたまえ。さしつかえなければ返事の必要はない。