轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

ただ、ひまなので、風呂でもわかしておいてやろうかと思っただけなんです。みんなは、今日はほこりをかぶって来るでしょうし、それに、今夜はお国自慢の会をやって遊ぶ予定でしょう。風呂でもあびて、さっぱりしたほうがいいんじゃありませんか。」

大河無門は、そう言ってにっと笑ったが、すぐ、

「おじゃましました。」

と、ぴょこりと頭をさげた。そしてのっそり立ちあがると、そのまま室を出て行ってしまった。

次郎は、ぽかんとして、そのすんぐりしたうしろ姿を見おくっていたが、戸がしまったあとまで、大河のにっと笑った顔が、あざやかに眼に残っていた。その笑顔は、こないだの板木一件以来、これで二度目だったのである。

かれは、いつまでもその笑顔にとらわれていた。まんまるな顔の輪郭、近眼鏡のおくにぎらりと光る眼、真赤な厚い唇、剃りあとの真っ青な頬の肉、そうしたものが、組みあわさってできあがる大河の笑顔には、一種異様な表情があった。それは、決して冷たい皮肉だとは受け取れなかった。かといって、単なるあたたかい親愛感の表現と受け取るには、その奥に何かきびしすぎるものが感じられたのである。