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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

05 第五部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 页

青空文庫

」

次郎は、目をぱちぱちさせながら、大河を見おろした。大河は、まだ心配そうな顔をして次郎を見あげている。次郎は、大河の顔に例の笑いが浮かんでいなかったので、ほっとした気持ちだった。

「ほんとうにだいじょうぶです。何でもなかったんです。」

次郎はもう一度そう言って、すぐ鋸をひきはじめた。

大河がそこいらにあった木の枝を運び去ったあと、次郎は、まるで質のちがった二つのにがい味を、同時に心の中で味わいながら、黙々として鋸をひいた。永久に恋を失ったということも、にがい味のすることだったが、弱い人間として大河無門の前に立たされているということも、それにおとらず、にがい味のすることだったのである。

三時になると、みんなは草っ原に腰をおろして、お茶をのみ、ふかし芋を食った。一人あたり一日五十銭の食費の中から、こうした場合のおやつ代をひねり出すのは、炊事部に任された権限なのであった。

郵便物当番も、もうむろんそのころには帰って来て、仲間に加わっていた。かれは、芋を頬張りながら、みんなに今日の発信数と、これまでの累計とを報告したあとで、言った。

「封書だけで言うと、今日がレコードだったよ。