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せいぎ
正義
浜尾 四郎
「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,327 字 · 43 页
僕らには相当面白い事件なんだがね。……時になんだったらゆっくりあの話でもきいて行かないか。君は知ってるだろうが、ワイフは不相変弱くてね、正月から小田原にずっと行ってるんだ。一人で淋しくて困ってる所なんだから、君の方さえよかったら久し振でここへ泊って行かないか、ゆっくり話そうじゃないか」
彼は斯う云って好意ある微笑を見せた。
清川純は昔ながらの美しい笑顔で之に応じたが、改めて答えた。
「僕は格別殺人事件に興味をもってるわけじゃないんですがね、ただあの松村子爵が殺されたか、どうかという事だけが妙に興味をそそるんですよ」
此の答えは衣川には意外であった。彼はただ清川をして出来るだけ気楽にその用件を(恐らくは通常の依頼人のように云い憎いものであろうから)云い切り出させるつもりで、自分が関係して居る事件を、云わば行きがかり上触れたにすぎない。
「ふーん、すると君は死んだ子爵と何か……」
「いや、全然知らない。子爵とは会ったこともないのです。けれど森木が殺したのか、又は子爵が自殺したのか、という事が妙に気になるのでね……」
自分が全力を注いでいる刑事事件についてこう云われると衣川も勢、乗り気にならざるを得ない。