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さいじきしんちゅう

歳時記新註

寺田 寅彦

「東京朝日新聞」1908(明治41)年9月12日~11月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,875 字 · 10 页

青空文庫

実際松山の霧は松の香がして火山の霧は硫黄臭い。しかし「霧不断の香をたく」というのは香煙に見立てた眼の感じで鼻の感じではあるまい。(明治四十一年十月一日『東京朝日新聞』)

八

火桶、火鉢

金属や陶器のは火を入れると周囲が熱くて触れなくなるが、木製のだとそんな事はない。これはつまり金属陶器木材等の伝熱率の大小による。この三者のうちで木材が一番熱を伝え悪いからたとえ内側は焦げるほど熱くなっても外までは熱が届かぬのである。灰には石灰や土灰をも用いるが普通は藁灰である。藁を燃やした屑にはまだ大分に炭素が残って黒い色をしているが火鉢に入れておくとこの灰はだんだんに燃えて灰ばかり残る。灰の成分は主に種々の軽金属の酸化物で、なかんずく水に溶ける分は強いアルカリ性でいわゆる灰汁になる。灰の火鉢における効用は強い炭火を容器に密接させぬ事や炭をのせる台になる事の外に、炭が急に燃えるのを防ぎ、また熱の直接に空気へ放散するのを一部その中に貯えておく事である。炭の活け方には色々あるが、要するに炭を並べて真中に縦穴を作り穴の下の方に横穴を作れば全体が丁度ストーヴの煙突と同じ作用をして空気の流通を促し炭の燃えるのを助ける訳になる。