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しのよこく
死の予告
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页
それならばとうの昔に俺が取って、安全な場所へ隠してしまったよ。その中にあるのは本当の林檎ばかりだ、遠慮することは無い。威勢よく投って御覧。なア女、伯爵も若い時悪い事をしたには相違ない、お前の母親を捨てたのは何んと言っても償うことの出来ない罪だ。けれども、お前も、そんなに執拗く人の命を絶つには及ぶまい、人間二人殺したら、大抵眼が覚めてもいい頃だ」
一座はシーンとして「足の勇」の話に聞き入りました。爆弾を隠したと聞いた安心に、がっかりして動けなくなったのかも知れません。「足の勇」は言葉を続けて、
「そんな無法な復讐は許されない事だ。お前はお前の無法な復讐の犠牲に、償をしなければならない。警官はもう来る筈だ。それ、あの門を入って来る足音がお前にも聞えるだろう、気の毒ではあるが、お前のような殺人鬼はこの世の中へ放し飼にして置くわけには行かない――それッ」
後ろ手に扉を開けると、サッと飛込んで来たのは、警官では無くて、其処へ立って居る、「足の勇」そっくりな、もう一人の「足の勇」です。
「やア遅れてすまなかった。警官は直ぐ後から来る筈だ」
先の「足の勇」の方がいくらか年を取って居るようですが、服装から態度から口調まで、並べて見ても紛れるほどよく似て居ります。