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しのよこく
死の予告
野村 胡堂
「文芸倶楽部」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,149 字 · 34 页
「それもあり得ない事だ。庭の出入口の前には私が居たし、廊下の方には、あのお転婆の姪の瑛子と、家政婦の鏡という女が話をして居たそうだし、窓はあの通り高いから、まさかあれへ飛付いて入るわけには行かない」
「すると、もし殺されたものとすれば、室の中で、絶対に見えない、空気のような人間か、又は特殊の仕掛かによって殺されたということになりますネ」
「まあそうだ」
「部屋へ入る前に、異状は無かったでしょうか」
「それも無いらしい。廊下に居る姪と家政婦に、冗談を言い乍ら入ったんだそうだから、身体に異状などがあった筈は無い」
「外に、何んにも変ったことが無かったでしょうか」
「たった一つある」
「…………」
「死体の左手に手紙を一通持って居たように思うが、それが、騒ぎの最中に無くなってしまって、どうしてもわからない」
「手紙? 伯爵へ来た手紙でしょうか、それとも自分の手紙だったでしょうか」
「茶色いハトロンの安封筒だったと思うから、私へ来た手紙ではあるまい。――ことによると、姪がよく知って居るだろう、あ、丁度いいところへ来た」
この時、四阿の前のローンへ、書生とラケットを持って飛出したのは海原伯爵の姪で、瑛子という美しい女性でした。