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しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

「話」1933(昭和8)年9月号~1934(昭和9)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,739 字 · 85 页

青空文庫

「こんな事、本当にあるんでしょうか」

と、その四角関係に、呆れた事があった。自然主義末期の影響で、こうした生活を、深刻とか、何んとか考えていたのであろう。

二十七

貧乏人には、貧乏人特有の痩我慢みたいなものがある。人からあいつ貧乏人だと云われたくない、というような、例えば、一円の値の物をやると、矢張り一円の品を返してくると云ったような――一種のひがみである。

私の在学中、私のクラスメートは、恐らく、私の貧乏を知らなかったであろう。それは、その後五六年もして私が原稿をかき出して

「おれは、実は貧乏だ」

と、云っても、信用しないばかりか

「直木の奴、※(「言+墟のつくり」、第4水準2-88-74)吐いてやがる」

と云ったりした人のあるので、明らかであるが、これは、私の家が、古着屋であると云う事を知らない為であったのだろう。家の商売が、商売だし、父が

(せめて、着物位は人並にしてやらんと)

と、云ってくれると、私も若い燕であるし、相当にいい着物を着ていた。

恐らく、クラスの中で、私位、筋の通った着物を着ていたのは、少かったであろう。だから貧乏に見えぬのは当り前である。