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しけんといきなわ

死剣と生縄

江見 水蔭

「講談倶楽部」1925(大正14)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,104 字 · 31 页

青空文庫

と竜次郎は手足を遠慮がちに伸ばすので有った。

「何、私は、話さえ分れば後はさっぱりです。何んとも思いはしませんが、併し先生、本当に帰って来て下さいましょうね」

「必ず帰る」

「此間の夜も。しみじみ云いました通り、私が以前に水戸の藤田先生の御存命中に承わった処では、今に世の中がどんでん返しをして、吃驚する程変ってくる。だから武家も、別して旗本衆などは、余程考えていなければ成らないので、大概なら剣道とか槍術とか、そんな方は見切りをつけて、砲術を学んだ方が為に成る。それには一度毛唐人の国へ行って来た方が好いとのお話……私は、実は貴郎に、米利堅へでも、和蘭陀へでも渡航して頂きたい位に考えて居りますのです。失礼ながら金は祖父の代から溜め込んで有るんですからね。二千や三千の金なら、何時でも耳が揃えられるんです」

「外国渡航に就ては、国禁も有り、吉田松陰の失敗もあり、併し追々は渡行出来ようで、是非一度は外国に渡り、見聞を弘くし、又砲術なども授って参りたいで、是非姉御の力を借らねば成らぬ故、必ず此方へ戻って来る」

「それに最一つ私は念を押して置きますよ。久々で江戸へ帰ったとて、女という女は、どんな女とでも、仲好くすると承知しませんよ」