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しけんといきなわ
死剣と生縄
江見 水蔭
「講談倶楽部」1925(大正14)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,104 字 · 31 页
三
やれ嬉しやと思う間もなく、パッと上から罠が落ちた。左脇の下から右の肩上に掛ったと思うと、キュッと締められた。と早や一気に釣上げられた。身は宙にぶら下った。
「先生、何んだって這んな真似をなさるの。どんな事が有っても逃がしませんよ」
上には憤怒に上釣ったお鉄の声がガンガンと響いた。
三
僅かの差で帰って来たお鉄が早速の投縄で、竜次郎の脱走を留めたので有った。高手小手に縛り上げて、裏の中二階に転がし放しにして、其傍でお鉄はやけからの茶碗酒を呷りながら、さも口惜しそうに口を切った。
「何んだって先生、逃げ掛ったのです。一寸私が油断してる間に……それも他の用で私は出たのでは有りませんよ。須賀津の溜から胡麻鰻を取って来て、丸煮で先生に差上げて、少しでも根気を附けて上げましょうと、それは私の一心からで、人手にも掛けず選りに行ったのですよ。それをまあ何事です」
お鉄は涙含んでさえいるので有った。
竜次郎は斯うして縛り放しにされている意気地無さ。我と吾身に愛想の尽きるので有った。之も皆師に叛いた罰だ。堕落した為だ。然ういう風に悔いながら、
「姉御、どうか許して呉れ。如何しても一度江戸へ行って来ねば相成らぬで」