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しいんのぎもん
死因の疑問
豊島 与志雄
「小説公園」1951(昭和26)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,260 字 · 27 页
赤い椿の花を大きく散らした銘仙のついの着物と羽織、真赤なメリンスの帯。それを清さんはたいへん嬉しがって、お正月から着初めました。袖丈なども丁度合っていました。けれど、帯は自分で締められず、近さんに締めて貰うのですから、いつでも着てるというわけではなく、洋服とちゃんぽんに用いていたのです。
その和服を着て、清さんは、二階の縁側の半分ほど閉めた雨戸に寄り添い、胸に両手をあて、西空に流れる赤い千切れ雲を眺めているのです。雲の色の反映か、全身が赤っぽい靄に包まれてるようで、そして薄らいで見えました。何を考えてるのでしょうか、または無心なのでしょうか、いつまでも動きません。
わたくしは庭から、清さんの様子を窺いながら、これまで、仕事の中途で休むなどということを清さんは一度もしなかったのに……とふと思いついて、へんな気持ちになり、そっと家の中にはいりました。
その時の印象が、今もはっきり残っております。けれども、わたくしは清さんを長く見守ることは出来ませんでした。幾日もたたないうちに、吹雪の夜がやって来、それからあの変事です。
わたくしは、清さんがあの崖から過って滑り落ちたのだとは、なんだか信じられません。