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しかばねをくうおとこ
死屍を食う男
葉山 嘉樹
「新青年」1927(昭和2)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,482 字 · 16 页
もちろん、部屋の窓の外は松林であった。松の梢を越して国分寺の五重の塔が、日の光、月の光に見渡された。
人数に比べて部屋の数が多過ぎるので、寄宿舎は階上を自習室にあて、階下を寝室にあててあった。どちらも二十畳ほど敷ける木造西洋風に造ってあって、二人では、少々淋しすぎた。が、深谷も安岡も、それを口に出して訴えるのには血気盛んに過ぎた。
それどころではない、深谷はできることならば、その部屋に一人でいたかった。もし許すならばその中学の寄宿舎全体に、たった一人でいたかった。
何かしら、人間ぎらいな、人を避け、一人で秘密を味わおうという気振りが深谷にあることは、安岡も感じていた。
安岡は淋しかった。なんだか心細かった。がもう一学期半辛抱すれば、華やかな東京に出られるのだからと強いて独り慰め、鼓舞していた。
十月の末であった。
もう、水の中に入らねばしのげないという日盛りの暑さでもないのに、夕方までグラウンドで練習していた野球部の連中が、泥と汗とを洗い流し、且つは元気をも誇るために、例の湖へ出かけて泳いだ。
ところがその中の一人が、うまく水中に潜って見せたが、うまく水上に浮かび上がらなかった。